・山上の垂訓、ルカは平地の垂訓と呼ばれる一節を思いだそう。マタイ福音書では、「心の貧しい人々は幸いである」とあるのに対して「貧しい人は幸いである」とあるとし、端的に「貧しい」ことが祝福されることであると言っている。(マタイの場合は共同訳聖書の訳、「神により頼む者は幸いである」というように、精神化している。)さらに、マタイにない「しかし、富んでいるあなたがたは、不幸である、あなたがたはもう慰めを受けている」と富に対する厳しい言葉がある。
・ルカの特徴を考えてみよう。ルカは預言者の伝統である「苦しんでいた人々は再び主にあって喜び祝い、貧しい人々はイスラエルの聖なるお方ゆえに喜び踊る。」(イザヤ29:19)という「貧しき者への福音」という預言を引き継ぎ、強調しているのが特徴である。
・「貧しき者への福音」という中での「金持ちとラザロの物語」が語られているのである。
・平地の垂訓「貧しい人は幸いである、神の国(マタイでは天の国)はあなたがたのものである」とあるように、ラザロはみ言葉の証言と語られ、「しかし、富んでいるあなたがたは、不幸である、あなたがたはもう慰めを受けている」とあるように金持ちは語られている。現代は世界が富むことを幸いとする時代の大きな流れにあるとき、富むことにはたして幸いであるのかを問い、ではどう生きるのかということを語ることである。そのヒントは「アブラハム言った『もし、モーセと預言者に耳を傾けないのなら』・・・」とあるように「モーセと預言者」つまり聖書の言葉に耳を傾けることである。