・マリアは非常に高価な香油をイエス様のために惜しげもなく使いました。
・イスカリオテのユダはもったいないと怒りましたが、イエス様はマリアのしたことをよろこばれました。
・イスカリオテのユダは自分のために発言し、マリアはイエス様のために行動したのです。
・過越祭の六日前にイエスはベタニアに行かれた。過越祭は、ユダヤ暦の新年であるニサンの月の14~21日に行われるもので、これは太陽暦の3~4月にあたる。8日間にわたるこの祭りは過越祭と除酵祭が一つに結び付いたもので、イスラエルの歴史における出エジプトの出来事を記念する祭りであった。祭りの期間中は神殿において犠牲が捧げられ、人々は種無しのパンを口にした。過越祭は巡礼祭であり、祭りにあたって各地からユダヤ人がエルサレム神殿に集まっていた。
・ナルドはヒマラヤ原産のおみなえし科の植物で、その根から取られるナルドの香油は古典的香料の一種である。現物は今日でもヒマラヤ山中の村々で栽培されており、ナルドの乾燥品は、漢方の甘松香(かんしょうこう)として輸入されている。ナルドはインドからヨーロッパにかけての広い範囲で古くから香料、薬草、宗教的儀式といった用途に用いられてきた。ナルドはヒマラヤ、中国、インドの高地でしか育たないため、イスラエルで流通していたナルドの香油はすべて輸入品であったと思われる。そんな貴重なナルドの香油をマリアは一リトラ(327.45グラム)持って現れる。5節ではそれに300デナリオン相当の価値があると指摘されている。1デナリオンが労働者の一日分の給料だったと言われているので、これは一般人の年収に相当するほど高価なものであった。
・イエスはマリアが「わたしの葬りの日のために、それ(ナルドの香油)を取って置いた」と語り、この塗油はイエスの死体の塗油の先取りであると告げている(当時は死体の防腐剤として埋葬時に油を塗る習慣があった)。つまり、マリアがイエス様の足に香油を塗ったのは、イエス様の遺体に香油を塗る未来を先取りしてのことであるということが示唆されている。
・イエスはこの場面を「貧しい人々はいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。」という言葉で締めくくられる。申命記15:11に「この国から貧しい者がいなくなることはないであろう。それゆえ、わたしはあなたに命じる。この国に住む同胞のうち、生活に苦しむ貧しい者に手を大きく開きなさい。」とあることを考えると、イエスの発言は必ずしも律法に適っているとは言えないが、しかし救い主への塗油というこの行為はそれ自体独自の価値、他と比べようのない良さを持っているのである。Ⅰコリ13:3に「全財産を貧しい人々のために使い尽くそうとも、誇ろうとしてわが身を死に引き渡そうとも、愛がなければ、わたしに何の益もない。」と記されている通り、神が最も喜ばれるのは愛だからである。