神の子イエス・キリストと弟子たちの一行が、「ガリラヤの向こう岸にあるゲラサ人の地方に着いた。」（26）時、「この町の者で、悪霊に取りつかれている男がやって来」（27）るという出来事がありました。この男は、主イエス様を見ると、ひれ伏して、大声で、「いと高き神の子イエス、かまわないでくれ。頼むから苦しめないでほしい。」（28）と願ったのです。

弟子たちは、まだ、イエス様が何者であるかを理解してはいませんでした。シモン・ペトロが、イエス様に対して、「神からのメシアです。」（9:20）と信仰を告白するのは、この後のことです。しかし、「悪霊は、イエスをメシアだと知っていた」（4:41）のです。

主イエス様は、「わたしが神の指で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちのところに来ているのだ。」（11:20）と宣言されます。主は、ご自身の支配、御国を来らすために、「神の指」＝「神の霊」（マタイ12:28）、すなわち、主は、聖霊によって、悪霊を追い出しておられたのです。

これについては、使徒ペトロが、「イエスは、方々を巡り歩いて人々を助け、悪魔に苦しめられている人たちをすべていやされたのですが、それは、神が御一緒だったからです。」（使徒10:38）と証言しています。だから、この日も、主は、御言葉により、「神の指」によって、悪霊を追い出し、悪魔に支配されていた人を解放されたのです。

恵みにより、「レギオン」から解放された人は、主イエス様に「お供したいとしきりに願」（38）いました。しかし、主は、「自分の家に帰りなさい。そして、神があなたになさったことをことごとく話して聞かせなさい。」（39a）と命じられたのです。これは、この人が、神の子イエス・キリストの証人として、ゲラサの地に遣わされたことを意味しているといえます。

事実、この人は、御言葉に従い、いと高き神の子イエス・キリストが、「自分にしてくださったことをことごとく町中に言い広めた。」（39b）のです。聖書には、「悪魔の働きを滅ぼすためにこそ、神の子が現れたのです。」（1ヨハネ3:8）と書いてあります。2000年前、神の子イエス・キリストが、罪と死と悪魔との力から、私たちを救い出すために、来てくださいました。

そして、主は、その愛のご生涯の最後に、十字架で、「御自身の血によって、ただ一度……永遠の贖いを成し遂げられたのです。」（ヘブライ9:12）——。しかも、それだけではなく、墓に葬られた主は、三日目に復活し、天に昇り、主は、ご「自分を受け入れた人、その名を信じる人々には神の子となる資格を与え」（ヨハネ1:12）てくださっています。

だから、恵みにより、十字架と復活の主イエス・キリストの信仰によって、救われた、現代に生きるあなたも、「暗闇の中から驚くべき光の中へと招き入れてくださった方の力ある業を」（1ペトロ2:9）、「神の子イエス・キリストの福音」を、あなたの家族や隣人に、広く伝えて行くのです。

（執筆：奈良部恒平牧師）