2012年7月29日 聖霊降臨後第9主日
マルコ5:21-43 哀歌3:22-33 Ⅱコリント8:1-15

今週の聖句

「タリタ、クム」「少女よ、わたしはあなたに言う。起きなさい。」
マルコによる福音書5:41

ねらい

・この個所は「ヤイロの娘」のいやしと、「イエスの服に触れた女」のいやしの二つの出来事が記されている。それぞれを取り上げて話をすることもできるが、今回は、二つの出来事の時間の流れを踏まえて、主を信じることについて考えたい。

説教作成のヒント

・娘のいやしに向かうイエスが途中で足をとめたことはヤイロにとって大きな焦りといら立ちを与えたことでしょう。またその後の「娘が亡くなった」という知らせにヤイロはどれほどの絶望を感じたでしょうか。しかし、イエスは、このヤイロに「恐れることはない。ただ信じなさい」と語ります。そして、再び娘を立ち上がらせることを通して、信じることはどのような絶望にも勝利することを示されるのです。

豆知識

・「会堂長」:人々の宗教生活の中心であった会堂で行われる礼拝や運営や、その建物の監督、管理を行っていた。

・「出血」:レビ15:25には、出血の止まらない女性に触れると「汚れる」と規定されている。

・「十二年間」と「十二歳」:出血の止まらない女性が病にかかっていた年月と、少女の年齢が同じ十二年である。病を考えると長いと思えるし、少女の命を思うと短いと感じる。

説教

遠い昔のイエス様の時代、ヤイロさんという人がいました。ヤイロさんはみんなから尊敬されるような人で、会堂長というお仕事をしていました。でもこのヤイロさんが今にも泣き出しそうな顔をしてイエス様のところに来て言うのです。「わたしの幼い娘が死にそうです。どうか、おいでになって手を置いてやってください。そうすれば、娘は助かり、生きるでしょう。」(23節)。12歳になる大事な娘が死にそうなのです。でもイエス様ならばきっと助けてくれるに違いないとヤイロさんは思ったのです。イエス様は、このヤイロさんの願いを聞いてくださり、いっしょにヤイロさんのお家に行くことになりました。ヤイロさんはほっと胸をなでおろして、「イエス様が来てくださる。良かった!」と心の中で叫びました。ところが、このようにヤイロさんの家に急いでいる途中のことです。どういうわけかイエス様は急に足を止め、キョロキョロとあたりを見回し始めました。どうやら、誰かがイエス様の服に触ったようであり、イエス様はだれが自分の服に触ったのかを見つけようとされているのです。しばらくすると、大勢の人の中に隠れていた女の人がそっとイエス様の前に出てきました。イエス様は、この人が12年間も病気に苦しめられて、病気が治ることを願ってイエス様の服に触れたことを聞くと、その場所でこの人と話し始めるのです。

この様子を見ていたヤイロさんは気が気でありませんでした。ヤイロさんの娘は今にも死にそうなのです。早くイエス様に来てもらいたいのに、イエス様は立ち止まって、知らない女の人と話し続けています。ヤイロさんのイライラはどんどん大きくなっていきます。そして、まだ二人が話しているうちに、ヤイロさんの家から人がやってきて、「お嬢さんはなくなりました」と告げたのです。ヤイロさんは目の前が真っ暗になりました。「どうしてイエス様はすぐに来てくれなかったのだろう。あの女の人と話をするのも大事なお仕事とは思うけれど、おかげで愛する娘は死んでしまった。」本当に悔しくて仕方がありません。そのようなヤイロさんを見てイエス様は「恐れることはない。ただ信じなさい」(36節)と言われたのです。

イエス様は、再びヤイロさんと一緒に歩きだし、ようやくヤイロさんの家に着きました。部屋にはすでに死んでしまった女の子が寝ていました。まわりの人たちは悲しくて泣いています。ヤイロさんの心も悲しみでいっぱいになりました。でも、イエス様はこの女の子に近づき、その手を取り、「タリタ、クム」と言われます。「タリタ、クム」とは、「少女よ、あなたに言います。起きなさい。」という意味です。すると死んでいたはずのこの女の子は起き上がったのです。ヤイロさんは驚きました。そして喜びのあまり、生き返った娘をぎゅっと抱きしめました。この時にヤイロさんは、イエス様を前よりももっと深く信じることを心に決めました。何故なら、イエス様を信じるとどんなにダメだと思うことでも、ダメでなくなることをヤイロさんはたくさん知ったからです。

「もう間に合わない。」「もう終わりだ。どうししょうもない。」そのような気持ちになった時に私たちは目の前が真っ暗、その場にへたり込んでしまいそうです。神様なんていないし、いたとしても何も私たちの望みを叶えてくれないような気持にもなります。でもイエス様は、そのような私たちに「恐れないで信じる」大切さを教えます。そして、死んだ女の子を「タリタ、クム」と言って起き上がらせたように、もう絶対にダメだと思う私たちも、もう一度、起き上がらせて元気に歩いて行く力をお与えになるのです。

分級への展開

さんびしよう

*讃美歌は”こどもさんびか”(日キ版)より

□100-2番 「ちいさいこどもの」

□改訂版7番 「イェスさま きょうもわたしを」

やってみよう

☆「風をさがそう」

<準備するもの>広告紙、すずらんテープ、セロテープ

①広告紙をなるべく細くまいて棒を作ります。

②棒の先に細くさいたすずらんテープを、セロテープで止める。

③外に出て、いろんな場所で風を探してください。

※目には見えないけど、確かにおられるイエス様を信じることができますように・・

はなそう

□ヤイロさんはどんな気持ちでイエス様のところに行ったのでしょうか。イエス様なら治してくれる?あまり信じていなかった?娘のところにいたかった?

□十二歳の娘が起き上がった時のヤイロと母親の気持ちはどんな気持ちだったでしょうか。

□十二年間出血が止まらない女性をどうしてイエス様は探したのでしょうか。

□イエス様はどうして他の人にこの出来事を教えてはいけないといったのでしょうか。